38754-01[1].jpg格落ち・査定落ちの請求について

対物損害について慰謝料支払いは基本的に認められないものですが、もともと対物損害というのは、保険会社が対物アジャスターの制度を導入して、修理工場と協定を行うようになって以来、スムーズに解決されてきた分野だったと言っていいでしょう。従来は経済全損の問題や代車の問題はあるものの、一般の人々が被害者となった物損事故については、修理費の問題さえ解決がつけば、それで一件が落着していたのです。

ところが、近年では一般の人々が被害者となった物損事故にトラブルを多発するようになってきたと言った印象をもっています。

相談も近年大変多くなっています。

その主たる原因の一つが、対物賠償の一項目として格落ち・査定落ちを要求するようになったことにあるように思われます。

格落ち損・査定落ちと言う考え方は、別に新しいものではありません。OA機器などのように高価な商品でありながら中古市場などが事実上存在しないものと異なり、自動車には成熟した中古車市場が存在することから、自動車は人を乗せたり物を運ぶと言った使用価値の外に、資産としての価値を有するものと考えられてきました。この資産価値が事故によって減少した場合の損害が格落ち損・査定落ちとして認識されてきたわけです。

もちろんずっと以前から大きな損害について格落ち損・査定落ちが問題とされたことはありました。

しかしながらこれまでは、どちらかと言えば格落ち損・査定落ちは「全塗装」と並んで反社会的な団体の言いがかりの口実と言った印象が強かったのも事実でしょう。ところが近年こうした状況に変化の兆し見えてきたのです。

ごく普通の被害者で、数年前であれば修理費と代車費用でこと足りたのではないかと言うケースに、しばしば被害者の側から格落ち損・査定落ちの問題が提起されるようになり、その結果として、対物損害の賠償がこじれると言うケースが増えてきたのではないかと言うわけです。

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判例上ではどうか

過去にさかのぼると、このように格落ち・査定落ちが問題とされるようになり、この点の判例では必ずしも一本化されているわけではなかったようです。

この判例には一般論として格落ち損・査定落ちという損害の存在を否定したものはないのですが、具体的に賠償義務ありとしたものは75%、無しとしたものは25%で一定の判例法が定着しているものとは言えそうにないと言うのが実情のようです。

それでも、個々の事案を検討すると格落ち・査定落ちが認められた事案には、やはり一定の傾向はうかがえるように思われます。

これを列挙すると以下の通りとなります。

 

新車要求、同等の中古車の要求に対してこれをしりぞけて、賠償の範囲を修理費プラス「格落ち損・査定落ち」に限定したものが多        い。

  購入後数日から3ヶ月くらいで事故に遭った自動車についてのものが多い。

  比較的多額の修理費を要した事案である場合が多い。

  比較的高価な自動車である場合が多い。

  事故後、被害者が事故自動車を第三者に処分し、被害者の有していたはずの資産価値の減少が現実化した事案が多い。

 

これらは、あえて少ない資料から分析したもので、個々の項目が決定的な要素になるものではありません。また、これらの各要素は、

具体的な事案の中では損後に関連しあっているようです。

認定額についても、一定の基準はないようなものです。

証拠を引かずに経験則から格落ち・査定落ちの額を15%と断言しているものもあれば、修理費の半分以上を格落ち・査定落ちと認定しているものもあります。

査定協会の事故減価証明の額をそのまま採用しているものもあれば、これでは不十分だとして詳細な論述と合わせて査定をかなり上回る格落ち・査定落ちを認めた判例さえあります。

一方格落ち・査定落ちが認められなかった事案は、単に証拠上認めることができないと言う理由で片づけられているものも多いようです。

現在の考え方はどうか

格落ち・査定落ちについては、何故それがその件では否定されるべきかまで詳細に論述しています。

その判例によれば、被害者の側に修理直後における通常予想しうる一般的交換価値の低下があったというのみでは被害者において、今だに現実に損害が生じたものとは言えない状態にいるのだから一般交換価値の低下自体を加害者に請求することはできないとしています。

その理由として、自動車を機能停止まで使用した場合には、交換価値の低下が現実には生じなかったのに、これを認める結果となるし、また転売時期が事故時より相当年数経過後になされれば、相対的に交換価値の低下も小さくなるからです。

 

今後の見通し

損害賠償にも流行があるようなものがあるようです。格落ち・査定落ちの一般の人々への浸透もこのようなものの一つでしょうか。

しかしながら、物損事故があれば必ず格落ち・査定落ちが請求できるという方向には、歯止めをかけなくてはいけないと考えます。多くの事故は、それほど多額の修理費を要するものではありませんし、多くの場合、事故を受けた自動車は修理されてその後々被害者によって何年も乗り続けられるものだからです。

かといって、格落ち・査定落ちをすべてのケースについて否定することもできないでしょう。

社会的公平の見地から格落ち・査定落ちに対してどのように対処すべきか、検討すべき点は多いと思います。