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自動車を盗難されて
犯人が人身事故を起した

被害者は政府の補償事業へ被害者請求

 

Aさんは自己の所有する自動車を鍵を閉めて夜間路上に駐車していましたが、ドアを壊してその車を盗難した犯人が、その後横断歩道を渡っていた歩行者Yさんをはねて大ケガをさせました。

犯人はその後逃走して不明。

被害者Yさんは、まずは政府の補償事業へ被害者請求となりましたが、自賠責と同様に限度額は120万円ですので、治療費が多額にかかり、慰謝料や休業損害まではまかなわれませんでした。

その後、被害者Yさんは車の所有者であるAさんに既払い以外の慰謝料や休業損害。また後遺障害の慰謝料や逸失利益等を請求しました。

Aさんに責任は生じるのでしょうか?

 

 

 

それは 無断運転

 

この事例はいわゆる無断運転のことです。

文字通り車の所有者の意志に基づかない運転と言うことになりますが、そのありさまはいろいろです。

この事例のように全く無関係な第三者の場合もありますし、家族や友人など身分関係のある場合など千差万別です。

 

身分が近ければ近いほど・・・

 

まず、身分関係の近い場合から考えてみましょう。身分関係が近いほど運行供用者責任が認められやすいことになります。

運行供用者は自賠責法三条により、「自己のために運行の用に供する者」であり、その自動車についての運行支配という捉え方がされ、この支配と言うことを直接的に支配する場合だけでなく、第三者を介して間接的に運行を支配していると認める限り、その支配下における運行としての責任も当然生じてくると言わざるを得ません。

車を他人に貸したような場合、借りて運転したものは勿論、貸した方もなお運行供用者としての責任が認められるは、間接的に支配しているからに外なりません。

この考え方を推し進めていくと、たとえ所有者が運転を認めていなくても、所有者と運転者の身分関係からみて、車の運転を認めていたと、とられるような外形を有している場合には、なお所有者に運行供用者としての責任を認めてよいとの考え方がでてきます。

会社の運転手が勤務を終えた後、私用の為に乗り出し、深夜まで飲み歩いた後事故を起した事例について、会社は所有者として運転を許諾し、または抑止することができる地位にあったものとして会社に運行供用者としての責任をみとめた裁判事例。

息子の友人が息子の承諾は得たものの、所有者たる父親に無断で運転し事故を起した場合に、父親に責任を肯定した裁判事例等枚挙にいとまがありません。

 

 

第三者の場合は

 

それでは全く関係のない第三者の場合はどうでしょうか。

身分関係のある場合ならともかく、全く関係のない第三者が勝手に車を盗んで事故を起した場合に、運行供用者責任が生じると言うのは、所有者に酷であるとような感じもします。

所有者は盗難の被害者であるわけで、それ以上に自分の関知しない事故の責任まで負わされてはまさしく不条理なことです。

しかし、無関係の第三者であっても運転を容認したとみられてもやむを得ない状況を所有者自らが作りだしているような場合には、その責任を認められてもしかたないと言わざるを得ないのではないでしょうか。

裁判事例を見てみると、繁華街の路上にエンジンキーを差し込んだまま30分間も駐車しておいたための搾取されて事故を起された事例で、「いつでも容易に運転できる状態においたまま自動車を30分間も駐車しておけば、世上自動車盗難が多く、窃取されることは予測されるところであるから、この放置しておいたことは第三者に対して自動車の運転を容認したと言える」として所有者に運行供用者責任を認めています。

運行供用者責任を認めるか、一般の不法行為によるか倫理の違いはありますが、考え方の根底は車の所有者としてその管理を全うしているかどうかと言うことに尽きると思います。

 

車の管理は十分に

 

それでは本事例のように夜間長時間路上に駐車中に盗まれて事故を起された場合はどうなるのでしょうか。

Yさんへの慰謝料や休業損害または後遺障害の賠償金は支払うべきなのでしょうか。

確かに自動車の夜間や長時間の違法駐車は自動車の保管場所の確保等に関する法律によって禁じられているところであり、Aさんの行為は違反行為です。が、法律は道路使用の適正、道路交通の円滑をはかる目的で立法されたものであって、自動車の盗難ないし、無断運転を防ぐと言うことは直接の関係がなく、無断運転をされたことにつき、管理義務を言及することはできないと言えます。

Aさんはエンジンキーを外し、窓を完全に施錠しているのであり、盗難ないしは無断運転されることを防ぐための管理義務を果たしていると言うことができ、さらに窓をこじあけ盗まれ、その結果人身事故を起されることまで予測せよと言うことはできないと考えられます。

なおその他、エンジンキーをつけたままであっても、駐車している場所が、車庫や敷地内である場合に、責任を否定した事例もあり、結局、第三者が容易に運転ができるような状態に車両をおいた場合に責任を認められると言うことでしょう。